介護休暇の証明書類と賃金控除の注意点|労務トラブル回避Q&A
今月の相談
介護休暇の申し出があった時の対応について
Qある従業員が介護休暇の取得を申し出たので
要介護状態にあることの医師等の証明書の提出を求めました。
しかし、提出がなかったため欠勤扱いにして賃金控除したところ、
相談窓口に苦情の申し出がありました。欠勤扱いで無給とすることはできないのでしょうか。
A 介護休暇とは、育児・介護休業法に基づく休暇です。
要介護状態にある対象家族の介護その他の世話をする労働者は、
事業主に申し出ることによって、要介護状態にある対象家族が1人の場合は年5日、
2人以上の場合は年10日を限度として、
休暇を取得することができます(育児・介護休業法第16の5第1項、第16の6第1項)。
ただし、日々雇用される労働者は対象から除外されており、
加えて労使協定を締結することで「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」
についても介護休暇の対象から除 外することができます。
介護休暇の「対象家族」は、介護休業と同様に、法律で一定の範囲が定められています。
具体的には、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹などが含まれ、特段、 同居の有無は問われません。
したがって、介護休暇の対象となるかどうかは、家族関係だけでなく、
その家族が要介護状態に該当するかどうかについても確認する必要があります。
介護休暇の対象となる「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上若しくは精神上の障害により、
2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。
これには障害児者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合も含まれますが、
乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まれません。
なお、要介護状態は介護保険制度上の要介護認定を受けていることが必ずしも要件ではありません。
常時介護を必要とする状態については、
法令上の判断基準が定められており、この基準を踏まえて判断することとなります。
また、会社は、労働者から介護休業や介護休暇の申し出を受けた場合に、
申し出に係る対象家族が要介護状態にあること等を確認するために
労働者に対して証明書類の提出を求めることができます。
ただし、証明書類は「医師の診断書」等に限定されるものではなく、
要介護状態にある事実を証明できるもので労働者が提出可能なものであれば差し支えありません。
したがって、就業規則において介護休業や介護休暇など介護両立支援制度等の申し出に
医師の診断書の添付を義務づけることはできず、証明書類が提出されないことをもって
介護休業や介護休暇を取得させないという運用はできません。
次に賃金の取扱いについてですが、 介護休暇は、介護休業を取得した場合の
介護休業給付金のような公的給付はなく、さらには 「無給」としている会社が多いのが実態です。
この点について育児・介護休業法では、介護休暇取得日の賃金について有給か無給かの定めはなく、
有給・無給は労使の決定に委ねていますので、就業規則等で定めておくことが必要です。
ただし、賃金、賞与等の算定にあたり、介護休暇の取得により労務を提供しなかった期間を超えて
減額するような取扱いは、介護休暇取得の権利の行使を抑制する作用が働くものとされ
「不利益な取扱い」として違法にもなるので注意が必要です。
また、介護休業は育児休業や産前・産後休業と同様に、労働基準法39条10 項に基づき
「出勤したものとみなす」と定められているのに対し、
介護休暇は法令上の特段の定めがなく、出勤したものとして取り扱う義務はありません。
年次有給休暇の取得要件となる出勤率(全労働日の8割以上)の算定の際の分母となる
全労働日から除外しなければならない義務もありません。
介護休暇の取扱いに関しては、
1全労働日に休暇日を含めたうえで出勤日として取り扱う、
2全労働日に休暇日を含めたうえで休暇日を欠勤日として取り扱う、
3休暇日を全労働日及び出勤日から除外する、
のいずれの取扱いとなるかについて就業規則等で明確にしておくことが適当です。
今月のポイント
就業規則に介護休暇等の申し出に対する医師の診断書添付を義務づけることはできず、
証明書類の提出がなくても介護休暇は取得可能。
取得日の欠勤扱いや賃金の有無については、
育児・介護休業法に定めがないため就業規則等で定めておく必要がある。
