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自宅待機を命じた社員への賃金支払いの必要性と基準|労務トラブル回避Q&A
今月の相談
自宅待機を命じた社員への賃金支払いの有無
Q 現在、社内相談窓口へのパワハラの訴えに基づく事実確認と、加害者である従業員の懲戒処分を検討するために、
当該社員に自宅待機を命じています。自宅待機中の賃金は支払わなければならないのでしょうか。
A ハラスメントに限らず従業員の犯罪行為や疑わしき事実が発覚した際、会社はその事実確認や、
当該行為における懲戒処分の程度を就業規則に基づいて検討するために一定の期間を要することがあります。
このような場合に対象従業員に対して調査終了、または懲戒処分が決定するまでの間、 自宅待機を命ずることもあります。
この自宅待機命令は懲戒処分としての出勤停止とは異なり、業務命令として行われるものです。
懲戒処分としての出勤停止は就業規則に基づく懲戒処分の一つであり、
法的要件(1就業規則の懲戒事由に該当すること、2処分の相当性、3適正な手続き〈弁明の機会等〉)
を満たせば処分期間中は、原則として賃金を支払う必要はありません。
しかし、ハラスメントの事実確認や横領等の犯罪行為の調査のために命ずる自宅待機は、
懲戒処分前の業務命令によるものであり、原則として、自宅待機命令期間中は賃金を支払う必要があります。
この点については判例においても、自宅待機命令は、
自宅に待機することをもって労務提供の内容とする旨の命令であり、
結局、労働者は、自宅待機命令という業務命令に従った
「労務」を履行しているものと解すべきとされています
(三葉興業嘱託契約更新拒絶事件、 東京高判平元. 5.30、 労判55496)。
なお、就労拒否により自宅待機を命ずるときには、原則として、
就業規則等の規定による根拠が必要となります。
ただし、就業規則にその定めがない場合でも事実調査をするためなど自宅待機命令事案に関する正当な理由があり、
その間の賃金を支払っているのであれば、自宅待機命令は可能となります。
ハラスメントなど特にデリケートな事案については、加害者及び被害者双方の言い分を聞き、
事実関係を確認して確証が得られなければ、対象従業員に出勤停止や懲戒解雇等の懲戒処分を下すことはできません。
後から懲戒処分無効の訴えを起こされるなど、新たなトラブルに発展することにもなりかねず慎重に対応する必要があります。
また、事態関係を明らかにしないまま軽い懲戒処分で事態を収めてしまうと、
後から悪質性が高い行為であったことが明らかになっても、原則として、
同じ行為に重ねて重い懲戒処分 (二重処分) をすることはできないので注意しましょう。
なお、自宅待機中に支払うべき賃金については、使用者の責めに帰すべき事由による休業とは異なるため、
労基法第26条に基づく休業手当(平均賃金の60%)ではなく、原則として賃金の全額を支払う義務があります(民法第536条第2項)。
例外的に無給が認められるのは、「就業規則に無給の規定があること」に加え、
「出勤させることで証拠隠滅や被害者への接触、職場秩序の混乱を招く具体的かつ重大な恐れがある場合」に限られます。
対象事案が懲戒処分として確定する前の段階で無給とすることは、労働者の生活保障が重視される近年の判例の傾向から、
会社側にとって高い法的リスクを伴うことになります。
次に、自宅待機期間はどの程度の期間が適当かということがあります。
事案にもよるため一概には言えませんが、例えば、懲戒事由の有無やその内容、
適切な処分を検討するための期間として自宅待機命令を出すのであれば、
そのために必要な期間にするべきです。
調査及び処分検討のために自宅待機命令を出したのに、
長期間にわたって調査や検討を怠って不必要に自宅待機命令期間が長くなったのであれば、
不適切な措置であると判断されることが考えられます。
したがって、2週間から長くても1ヵ月程度が適当でしょう。
それ以上長くなると不当な拘束ともなり、逆パワハラとして提訴される恐れもあります。
