コラム

「令和8年度地方労働行政運営方針」を読む

2026年4月10日、厚生労働省が「令和8年度地方労働行政運営方針」を策定しました。

各都道府県労働局はこれをもとに管内事情に則した重点課題・対策等を盛り込んだ行政運営方針を策定し、
計画的な行政運営を図ります。ここでは、企業の労務管理に直接影響のある課題を確認します。



今年度の重点課題

「地方労働行政運営方針」には、その年度における労働行政の重点課題が示されており、
毎年4月に都道府県労働局長に対して通達されます。
労働行政を取り巻く環境は、物価上昇に加えて、少子高齢 化に伴う生産年齢人口の更なる減少により、
企業において人材の確保が困難となり、生産性や経済成長に影響を及ぼす労働供給制約が強まることが予想されています。

運営方針では、経済社会の活力を維持・向上させるために、
引き続き物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備を進める必要があると指摘。

同時に、労働供給量の確保に向けた取り組みを進め、
個人のニーズに応じた多様で柔軟な働き方を選択することができる
社会の実現を目指す必要があると記されています。

賃金に関する支援

現在の最低賃金は、2025年度の改定により全国加重平均1121円、
引き上げ幅は66円となっています。

さらに2020年代において全国加重平均1500円とする目標を掲げています。
最低賃金額については、使用者および労働者などに周知徹底を図り、
履行確保上問題がある業種に対して重点的に監督指導を実施。

適切な価格転嫁と生産性向上に対する支援を行うことにより、
更なる引き上げを可能とする環境整備を進めるとしています。
賃金の引き上げについては、引き続き同一労働同一賃金の遵守徹底を図る方針です。

監督署による定期監督などにより、短時間労働者や有期雇用労働者、
派遣労働者の待遇などが不十分である場合には、
雇用環境・均等部 (室)・安定部による報告徴収や指導監督により是正指導の実効性を高め、
企業の自主的な取り組みを促す方針です。

また、労働市場全体の賃上げを支援するため、設備や人への投資による生産性向上や
非正規雇用労働者の処遇改善などを通じて賃金の引き上げを行う事業主に対して、
「賃上げ支援助成金パッケージ」の周知・利用促進を行うとしています。
それに加えて、日本政策金融公庫の融資制度である
「働き方改革推進支援資金」についても周知を行うとしています。

さらに物価に負けない賃金の引き上げを行うためには、
労務費の転嫁を通じた取引適性化が不可欠であるとして、
公正取引委員会による指針の周知・徹底を図るとしています。

多様な人材の活躍促進

生涯現役社会の実現に向けて、改正高年齢者雇用安定法に基づき、
事業主は65歳までの雇用機会を確保する義務に加え、
70歳までの就業確保等措置について努力義務が課されています。

当該措置を講じる企業割合に関しては、
2029年までに40%以上とする目標が掲げられています。
環境整備や高年齢者への処遇改善を行う企業に対して、
助成額を拡大した「65歳超雇用推進助成金」を周知すると同時に、
高齢・障害・求職者雇用支援機構と連携し、
70歳雇用推進プランナーなどによる相談支援を行うとしています。

年々増加する外国人労働者については、雇入れや離職時の届け出義務や、
母国語を併記した労働条 件の明示など適切な雇用管理を記した指針に基づき、
事業主への指導・相談支援などを実施するとしています。

障害者雇用については、2025年4月に障害者の就業が一般的に困難であると
認められる業種に適用される除外率が10ポイント引き下げられたほか、
2026年7月には法定雇用率が2.7%に引き上げられる予定です。

雇用義務が生じる企業に対して周知・啓発を行うと同時に、
企業が抱える不安や課題に応じた支援などを行い、
障害者の計画的な雇入れを一層促進する方針です。

女性の就業率については近年上昇しているものの、非正規雇用の多さや、
男女間賃金格差、女性管理職の割合の低さなどが課題となっています。

改正女性活躍推進 法の成立により、2026年4月以降、常時雇用する労働者数101人以上の
事業主に男女間賃金差異及び女性管理職比率の情報公表が義務付けられたことから、
計画的な報告徴収などの実施により確実な履行確保を図るとしています。

多様な働き方に係る環境整備

2025年4月から改正育児・介護 休業法が段階的に施行され、
男性の育児休業取得率を2030年までに85%とする政府目標が掲げられています。

仕事と育児などの両立 支援に係る職場環境整備に取り組む事業主に対しては、
「両立支援等助成金」の活用推進を行い、子育てを行う女性及び男性に対しては、
「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」について周知し、円滑な支給を行うとしています。

テレワークについては、改正育児・介護休業法により導入が努力義務となり、
3歳未満の子の養育 のための短時間勤務制度の代替措置としての利用も認められています。
引き続き、適切な労務管理下におけるテレワークの導入・定着を図るために、
「人材確保等支援助成金」の利用促進や、 ガイドラインに沿った助言などを行う予定です。

勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後、
翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を設ける仕組みであり、
労働者の生活・睡眠時間を確保することを目的としています。
2024年4月以降、改善基準告示により、タクシーやトラックなどの自動車運転者に対して、
1日の休息時間を従来の継続8時間以上から、継続11時間以
上少なくとも9時間以上与えるこ とが努力義務となっています。

制度の導入促進にあたっては説明会などを開催し、
対象となる中小企業事業主に対しては、「働き方改革推進支援助成金」の
周知・利用促進を行うことにより、時間外労働の削減などに取り組む方針です。

安全・安心な職場環境の整備

長時間労働の抑制と過重労働による健康障害の防止については、
引き続き時間外・休日労働の時間数が1ヵ月80時間を超える
事業場などに対して監督指導を行うとしています。

特に過労死等に係る労災請求が行われた事業場については、改善計画の策定を求め、
その取り組みを定着させるための助言・指導を実施する方針です。

従来の適用除外業種である建設業・ドライバー・医師については、
2024年度以降、時間外労働の上限規制が適用されています。
労働時間短縮に向けて、業種ごとの支援に取り組むとともに、
「働き方改革推進支援助成金」の周知・活用推進を行うとしています。

「労働災害発生状況」(厚生労働省)においては、2017年以降の5年間で
死亡者数15%減を達成しているものの、休業4日以上の死傷者数は増加しています。

第14次労働災害防止計画では、転倒防止対策や
高年齢労働者に配慮した職場環境の整備などを課題として、指針の周知、指導を行い、
「エイジフレンドリー補助金」の活用推進を行うことにより、企業の自発的な取り組みを促す方針です。

また50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施義務化を見据えて、
医師による面接指導に対応する地域産業保健センターの体制を拡充し、マニュアルと併せて周知を行うとしています。
その他、化学物質などの管理方法の見直しに伴い、健康障害防止対策を推進する予定です。


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