通勤手当の決め方のポイント
在宅勤務の定着により見直しが必要な場合も
多くの会社では従業員が居住する自宅から会社までの通勤費を「通勤手当」として支給しています。
この通勤手当の有無及び支給額の決め方については迷うところでもあります。
そこで、通勤手当の支給基準を定める場合の留意点についてまとめます。
通勤手当とは
通勤手当とは、従業員の通勤にかかる費用を、
会社が手当としてその全額または一部を支払うもので、企業規模を問わず多くの会社が支給しています。
しかし、通勤手当の支給は、法的に義務付けられた賃金ではないため、
支給する場合でも支給基準や支給額の決め方が会社ごとに異なります。
また、在宅勤務者の増加により、通勤手当を廃止する会社もあります。
通勤手当は所得税法上の給与所得に該当し、
国税庁が示す1カ月の非課税限度額までであれば、所得税は課されません。
非課税限度額については、電車やバスなどの公共の交通機関を利用する場合と、
マイカーや自転車で通勤する場合とで異なります。
なお、2025年11月20日に通勤手当の非課税限度額の改正が施行され、
自動車や自転車などの使用による非課税限度額が引き上げられました。
通勤手当のルール化
通勤手当の支給は労働条件の一つですので、支給する場合は支給対象者、支給条件、支給額基準、
申請手続などを就業規則や賃金規程など(以下、就業規則等)に定める必要があります。
例えば、通勤定期代は1ヵ月単位より3ヵ月単位、
6ヵ月単位の方が安くなりますので、 その支給 単位を決めなければなりません。
新幹線通勤など遠方からの通勤については、支給上限額を設けるか否かという問題もあります。
在宅勤務を認めている場合は、通勤日数などを基準に定期代相当額で支給するのか、
旅費交通費として実費支給するのかなどの問題があります。
定期相当額と出勤日数に応じた実費を計算しての比較となりますが、
実際に何日まで出社したら定期相当額が実費を上回るのか算出し、
例えば「○日よりも多い出社の場合は定期額を支給する」などと決めておくのも方法の一つです。
また、マイカーや自転車での通勤を認めている場合においては、
会社から何km以上の居住者を支給対象とし、支給額はいくらとするかなどの検討も必要です。
通勤の経路及び方法の基準
通勤手当の支給条件を定めた規則としてよくあるのが、
「通勤手当の支給に係る通勤の経路及び方法は、
最も経済的かつ合理的な経路及び方法により会社が認めたものに限る」というものです。
この場合によく問題となるのは、通勤に係る経路及び方法が複数ある場合に
「経済的な経路及び方法」(通勤手当が安い方)と
「合理的な経路及び方法」(通勤時間が短い方)のどちらを優先するのかということです。
一般的に、通勤手当が高くても通勤時間が短い方を望むのは従業員で、
通勤時間が多少かかっても経済的な経路及び方法を選択したいのは会社であるため、
その利害は相反することになります。
この点について、裁判例では「『経済的』であるとは、基本的に他の経路と比較して運賃等が低額であること、
『合理的』であるとは、基本的に他の経路と比較して所要時間が短いことを指す」ものと示しています(平30.10.24東京地裁判決)。
そして、「何をもって最も経済的かつ合理的であるかの判断は、双方の要素の差の程度を比較考量して決める他ない」としています。
同裁判例では、最短経路によれば通勤時間が10分短縮できるとして、従業員が同経路に基づく通勤手当を請求した事案に対して、
他の経路の定期券代金相当額 (3カ月分)との差が1万円以上に上ることに照らすと、必ずしも所要時間の差を重視すべきとはいえず、
従業員が請求する最短経路は、最も経済的かつ合理的な経路とはいえないとして、従業員の請求を認めませんでした。
会社として通勤時間と経済性のどちらを基準とするかも決めておく必要があります。
