コラム

事業主の就活セクハラの防止措置が義務化

近年、「就活ハラスメント」が社会問題として深刻化しています。
就活ハラスメントは学生の被害にとどまらず、企業にとっても大きなリスクが伴います。
ここでは、2025年の法改正を踏まえ、
セクシュアルハラスメントに焦点を絞って就活ハラスメントの防止策を確認します。

就活ハラスメントの実態

「就活ハラスメント」とは、就職活動やインターンシップの場における
学生等に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどの
ハラスメント行為のことを指します。

特に目立つのがセクシュアルハラスメントです。

厚生労働省の「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」
によると、2020年~2022年度卒業就職活動中(転職を除く) または
インターンシップ中にセクシュアルハラスメントを一度以上受けた 者の割合は、
それぞれ30%を超えています。

就活中のセクハラの内容としては、「性的な冗談やからかい」や「食事やデートへの執拗な誘い」、
「不必要な身体への接触」が多く、セクハラを受けた場面(インターンシップ以外)は、
「リクルーターと会った時」や「内々定を受けた後」の割合が高くなっています。
また、行為者については、インターンシップ中はインターン先で知り合った
従業員や上司・指導役(役員以外)、インターンシップ以外の就職活動中では
大学のOB・OG訪問を通して知り合った従業員や学校・研究室等へ訪問した従業員、
リクルーターが多いようです。

セクハラを受けたことによる心身への影響としては、就職活動に対する意欲の減退や、
不眠、怒りや不満、不安など心身への影響が挙げられています。
セクハラを受けた後は、家族や友人、労働基準監督署などへ相談したり、
セクハラを受けた企業に対する就職活動を辞退したりといった行動がみられる一方、
何をしても解決にならない、あるいは就職活動に不利になるとして
何もしない人も一定数存在することが報告されています。

就活セクハラの定義

2025年6月、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
(労働施策総合推進法)の一部を改正する法律が公布されました。

改正法では、就職活動中の学生やインターンシップ生など(以下、求職者等) に対する
セクシュアルハラ スメントを防止するため、国、事業主及び労働者の責務を明確にし、
雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務付けるとしています。

公布から起算して1年6カ月以内の施行に先駆け、同年12月10日に
「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して
雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」(以下、指針案) が公表されています。
指針案によると、求職活動等におけるセクシュアルハラスメント (以下、 就活セクハラ)は、
「事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されるもの」
と定義されています。
性的指向またはジェンダーアイデンティティにかかわらず、
同性に対するものも本指針案の対象となっています。

「求職活動等」とは、企業の採用面接や就職説明会、インターンシッ プへの参加をはじめ、
企業の雇用する労働者への訪問、教育実習や看護実習など実習の受講のほか、
SNSなどのオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれます。
「労働者」とは、派遣労働者を含む事業主が雇用する労働者のすべてを指しています。

また、「性的な言動」については、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、
性的な事実関係の質問やその情報の意図的な流布、また性的な関係の強要、
不必要な身体的接触、わいせつな画面の配布などが含まれます。



対策の義務化 1 〜方針と周知~

指針案によると、まず事業主は、就活セクハラを行ってはならない旨の方針を
明確にした上で、管理監督者を含む労働者に周知・啓発しなければなりません。

具体的には、就業規則その他職場における服務規律等を定めた文書において、
就活セクハラを禁止する方針を規定することが有効です。
さらに就活セクハラに係る性的な言動を行った者について、
厳正に対処する旨も記載する必要があります。
その上で、就活セクハラの内容のほか、性別役割分担意識に基づく言動が
セクシュアルハラスメントの原因や背景となり得ることを、
社内報や研修などを通して、労働者に周知・啓発することが重要です。

企業における求職活動等への対応については、面談時間や場所の指定、
求職者等とのやり取りに使用するSNSの種類など、
具体的なルールを設けて労働者に周知・啓発を行うことも大切です。

さらに求職者等に対しても、面談などに関する留意事項を
ホームページやパンフレットなどの広報手段を用いて、
企業としての求職活動等への対応を周知しなければなりません。

対策の義務化2 ~相談窓口と事後対応~

また、指針案において、事業主 は求職者等からの相談に対して
必要な体制を整備することが求められています。

具体的には、苦情を含む相談に対応できる窓口を設置し、
広報手段を通じて求職者等に対し周知する必要があります。
相談窓口については、適切な対応ができるように、
担当者や関係部署に対して研修などを行い、
必要に応じて外部委託とすることも検討するとよいでしょう。

また、相談対応の留意点などを記載したマニュアルを作成し、
人事部門と連携を図りながら対応できる仕組みとするなど、
手順に沿って対応することが重要です。

実際に就活セクハラに係る相談の申し出があった場合には、
迅速かつ適切に対応することが求められます。
まず被害者のプライバシー保護を前提に、双方から迅速かつ正確に事実確認を行い、
事実確認が不十分な場合は第三者からも聴取し、必要に応じて、
中立的な第三者機関に紛争処理を委ねましょう。

就活セクハラ行為が事実と確認ができた場合は、被害者への謝罪など
被害者の救済措置を速やかに行うことが重要です。
同時に、社内においては、就業規則などの懲戒規定に基づき、
行為者に対して必要な処分を行い、改めて研修を実施するなど
再発防止に向けて周知徹底を行う必要があります。
被害が深刻な場合は、社外への公表を検討する必要もあるでしょう。

実際に公表する場合は、被害者の承諾を得た上で、
プライバシーに万全の配慮を行うことが必要です。

未然に防止する取り組み

「就職」は、一人の人間にとって、生活の安定や社会参加を通じた生きがいなど、
生きていく上で極めて重要な意義をもっています。

一方で就活セクハラは、立場の弱い求職者等の尊厳や人格を不当に傷つけるなど、
人権にかかわる許されない行為です。
結果として、企業は社会的信用の失墜や応募者の減少、
社内においては生産性の低下や人材の流出など、大きなリス クにさらされる可能性があります。

就活セクハラを未然に防止するには、応募者の「基本的人権の尊重」及び
「適性・能力に基づいた基準」を基本的な考え方とする
「公正な採用選考」に基づいて、面談を実 施することが重要です。

厚生労働省の特設サイト「公正な採用選考をめざして」を参考に、
自社の求職活 動等を見直し、積極的に採用活動 を行っていきましょう。



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