コラム

労働契約の締結、休業手当、賃金等について取りまとめ

2025年7月4日、労働者及び使用者に向けて、いわゆる「スポットワーク」に
関する留意事項などを まとめたリーフレットが厚生労働省より公表されました。

そこで、リーフレットに基づいた「スポットワーク」の利用における労務管理上の注意点について確認します。

利用の急拡大と問題点

「スポットワーク」とは、短時間・単発の就労を内容とする働き方です。
スポットワークは、企業から業務を委託されて個人事業主として働く「ギグワーク」 と、
企業と労働者が労働契約を結んで働く「スポットバイト」の大きく2つの就労形態に分けることができます。
特に雇用仲介を行う事業者(以下、スポットワーク仲介事業者)が提供する
サービスである雇用仲介アプリを介したスポットワークは、働き手の都合だけでなく、
企業にとって一時的な人手不足に迅速に対応できるなど、
労働者と事業主双方にとって利便性が高い働き方として注目されています。

近年、雇用仲介アプリを介してスポットワークを利用する企業が増加している一方、
勤務日のキャンセルに伴う休業手当などの賃金不払いや求人内容と実際の労働条件の相違、業務の不履行など、
労働基準関係法令の相談、申告が都道府県労働局や労働基準監督署に寄せられています。

スポットワーク市場の拡大に伴い、利用企業の法令順守と働き手の保護を図る必要性から、
厚生労働省では、雇用仲介アプリを利用してマッチングや賃金の立替払いを行うものを「スポットワーク」として定義。
労働者及び使用者に向けてリーフレットを作成し、労務管理に関する注意喚起を行っています。



労務管理上の注意点1 ~労働契約の締結

面接などを経ることなく、短時間に求人と応募がマッチングする
スポットワークは、スポットワーク仲介事業者ではなく、
事業主と労働者(以下、スポットワーカー)が労働契約を締結することになります。

労働契約は、労働者が事業主に使用されて労働し、
その対価として事業主が賃金を支払うことについて、双方が合意することにより成立します。
スポットワークのように、先着順で就労が決定する求人では、特段の合意がなければ、
スポットワーカーが求人に応募した段階で双方の同意があったものとして労働契約が成立すると考えられます。
労働契約成立後は、労働基準関係法令が適用されるため、事業主は法令に従って労働条件を明示し、
内容の変更に際しては、事業主とスポットワーカー双方の合意が必要となります。

また、スポットワークは期間の定めのある労働契約であり、労使間で特段の合意がない場合や、
やむを得ない事由がある時以外は、労働契約を途中で解約することはできません。
労使間において解約権留保付労働契約を締結する場合は、締結後のキャンセルが可能と
なる合理的な事由や別の就労機会を見つけるための時間的余裕に配慮した解約の期限をあらかじめ示し、
スポットワーカーにのみ不利な内容にならないよう留意する必要があります。

労務管理上の注意点2 ~ 休業手当

休業手当とは、事業主側の都合により労働者を休ませた場合に支払わなければならない手当です。
労働契約成立後、天災事変など不可抗力によるものを除き、突然のキャンセルなどにより丸一日の休業、
または早上がりをさせることになった場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるため、
スポットワーカーに対して、所定支払日までに休業手当を支払う必要があります。

休業手当は、平均賃金の6割以上の額となりますが、
その日に約束していた賃金の全額を支払うことでも差し支えありません。

ただし、事業主の故意または過失などにより休業させることになった場合は、
民法上その日の賃金全額を支払わなければなりません。
既に休業手当を支払っている場合でも、当該手当を控除した額の支払いが必要となります。

労務管理上の注意点 3 ~賃金

労働基準法において「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、
一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められています (賃金支払いの5 原則)。

利用する雇用仲介アプリに よっては、
スポットワーク仲介事業者による賃金の即日支払いサービスを設けていることもありますが、
労働条件通知書などに所定支払日を記載している場合は、
事業主が「賃金支払いの5原則」に従って支払う必要があります。

労働条件通知書などで示した賃金の額を一方的に減額する、
別途支払うと記載した交通費などを支払わないといった事業主の行為は、労働基準法違反となります。
「賃金支払いの5原則」に違反したとみなされた場合は、
30万円以下の罰金に処される可能性があるので留意しましょう。

労務管理上の注意点 4 ~ 労働時間

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、
使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間とみなされます。
スポットワークにおいても同様に、業務に必要な着替えなど就業前の準備行為や、
業務に関連した清掃など業務終了後の後始末を事業場内にて行う場合は、
労働時間として取り扱う必要があります。

求人の際は、着替えや清掃などの時間も含めて始業・終業時間を設定し、共有しておきましょう。
なお、事由にかかわらず、使用者の指示による待機時間も労働時間となります。

また、スポットワーカーから実際の労働時間による修正の承認申請がなされた場合などの
勤怠管理に関する対応については、あらかじめルールを設定し、共有しておくことが大切です。
賃金は労働者の生活の糧であることから、
予定されていた労働時間に基づき賃金は遅滞なく支払わなければなりません。

労働時間の考え方については、厚生労働省による
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を確認しておきましょう。

その他、労務管理上の注意点

労働災害防止対策も事業主の義務となります。
短時間単発の就労であっても、雇入れ時における機械等の危険性や安全装置の取扱い方法等の教育の実施など、
労働安全衛生法に基づく各種措置を講ずる必要があるので留意しましょう。

就労先の事業所においては、スポットワーカーも労災保険の適用対象となるため、
あらかじめ労災事故発生時における手続きフローを作成し、共有することが重要です。

またスポットワーカーもハラスメント対策の対象となります。
相談窓口などパワハラやセクハラ防止のための各種措置について、
労働契約締結時に説明できるように、あらかじめ対策を講じておきましょう。



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