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定年後雇用に向けた人事制度設計のポイント
勤務延長制度や再雇用制度の導入で高齢者を活用
「高年齢者等職業安定対策基本方針(2020年)」によると、
2040年までに2.4人に1人が60歳以上の高齢者になることが見込まれています。
少子高齢化により労働力が減少するなか、高齢者の活用は企業の重要な経営課題の一つです。
そこで、定年を迎える従業員の継続雇用について考えます。
高齢者雇用の法律
高年齢者雇用安定法では、雇用する高齢者について65歳までの
安定した雇用の確保を目的として、定年を定める場合は60歳以上と定めています。
その上で高年齢者雇用確保措置として、「定年制の廃止」や「定年の引き上げ」、
「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講じることを事業主に義務付けています。
「継続雇用制度」は、雇用する高齢者が希望する場合、
定年後も引き続き勤務延長または再雇用により雇用を確保する制度であり、
2025年4月からは事業主に完全に義務化されています。
また、2021年4月1日には、65歳以上70歳までの就業機会確保措置として、
働く意欲のある高年齢 者がその能力や経験を活かして働ける環境の整備を目的とした、
改正高年齢者雇用安定法が施行されました。
上記の雇用による措置に加えて、雇用以外の働き方として、
「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」という
創業支援等措置を講じることが事業主の努力義務となっています。
高齢者の雇用・就業の状況
総務省の「労働力調査 (2025年)」 によると、
15歳以上の就業者数と完全失業者数を合計した「労働力人口」は、
2025年平均で前年比47万人 増の7004万人と、3年連続の増加となりました。
その要因として考えられるのは女性と高齢者の活躍です。
2025年の65歳以上の就業者数は22年連続で増加して943万人と過去最多、
15歳以上の就業者総数 に占める65歳以上の就業者の割合は13.8%と過去最高、
65歳以上の年齢階級別就業率もいずれも過去最高に達しています。
また厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告(2025年)」によると、
高齢者雇用確保等措置の実施状況は実施済みが99.9%で変動なし、
措置内容は継続雇用制度の導入が65.1%(前年比2.3ポイント減少)、
定年の引き上げが31%(同2.3ポイント増加)となっています。
さらに70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況は、
実施済みが34.8%(同2.9ポイント増加)と、
70歳までの雇用継続の流れは着実に定着してきていることが確認できます。
高年齢者雇用の利点と課題
今後さらに深刻となる労働力不足に対応するためには、70歳までの雇用を見据えて、
人事制度の見直し・仕組みづくりの対策を早めに進めていくことが重要となります。
70歳までの継続雇用制度導入のメリットとしては、
労働力の確保や技術・技能の確保及び伝承が可能となり、
賃金面においては勤務形態の多様化により人件費の低減が可能となることなどが挙げられます。
一方、経営上の課題としては、総人件費の増加や、
労務構成上若年者の雇用に制限を受ける可能性があること、労働環境の改善によるコストの増加、
高齢者用の職務開発の必要性などがあります。
また、体力の低下に伴い作業効率が落ちる可能性、
転倒などで労災の発生リスクが増大する可能性もあり、
従来以上に健康管理や安全管理への配慮が必要となることは避けられません。
高齢者の特性を理解した上で、企業と高齢者双方にとってメリットのある制度を構築することが大切です。
制度設計の進め方
まず自社において定年後の高齢者にどのように活躍してもらうのか、活用方針を明確にする必要があります。
活用方針については、高齢者に期待する「業務の内容・責任の程度」と
「働き方」の2つの視点で考えることがポイントです。
自社における年齢別人員等の労務構成を確認し、意識調査アンケートを行うなど、
従業員の定年後に対する考え方や働き方のニーズを把握することから始めましょう。
次に、高年齢者雇用確保措置を始めとする制度の中から、活用方針に対応した望ましい制度を検討し、
導入後のメリットとリスクを整理して検討課題を洗い出します。
具体的な検討項目としては、導入する制度や雇用年齢の上限に基づく今後の労務構成の在り方、
高齢者向けの職務開発及び職場・作業環境の整備の必要性、人事制度の見直し、
健康管理・安全衛生管理対策などが挙げられます。
制度設計は、組織の将来的な事業計画や人員配置計画なども踏まえる必要があります。
推進体制を構築し、 経営層の理解と関与を得ながら導入スケジュールを計画して進めましょう。
継続雇用制度における留意点
人事処遇の内容は、長期安定雇用の実現により
従業員のモチベーションを上げるうえで特に重要な項目です。
制度設計においては、上表の設計例のように高齢期に
「業務の内容・責任の程度」が変わるのか変わらないのかによって、
退職後の活躍の仕方を「現役型」、「柔軟型」、「限定型」に分類して検討することが有効です。
継続雇用制度は主に「勤務延長制度」と「再雇用制度」に分けられます。
勤務延長制度は、定年年齢は変更せず、従来と同一の雇用契約で勤務を延長する制度です。
職位を継続するのが一般的ですが、研究職・技術専門職などは職位のみを解いて
同一の職務・業務内容・業務量で運用することもあります。
人事制度においては、65歳あるいは70歳まで運用できる等級制度の再構築が必要であり、
時間的・コスト的余裕をもって取り組む必要があります。
再雇用制度は、定年を適用して一旦雇用関係を終了させ、
新たな条件で契約を締結する制度であり、1年単位の有期雇用契約とするのが一般的です。
正社員と有期雇用契約社員の間に賃金や処遇などに関して
決定基準などに相違を設ける場合は、不合理とならないように留意しましょう。
また、役割に応じた等級制度などを導入する場合においては、
貢献度を「見える化」するなど明確な基準で評価・処遇することで、
公平性や納得性のある制度とすることも重要です。
導入決定した制度は就業規則などに記載して規定化し、
周知・徹底を行い、定着させていく必要があります。
導入後は従業員の意見を聴いたうえで、成果と今度の課題、対応策を把握し、
フォローアッ プを行いながら、自社にとって最適な制度を構築していきましょう。
