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「治療と就業の両立支援指針」のポイント
治療をしながら安心して働くための職場づくり
厚生労働省から「治療と就業の両立支援指針」が公表されました(2月10日)。
少子高齢化と人口減少による高齢者の就労増加が進む中、
病気を抱えながら働く労働者を支える体制づくりは企業にとって避けられない課題です。
そこで指針に基づき、治療と就業の両立支援の進め方を確認します。
疾病を抱える労働者の状況
「治療と仕事の両立に関する実態調査」(2022年、独立行政法人労働政策研究・研修機構)によると、
過去3年間において該当疾患に罹患している従業員がいる企業の割合は、「糖尿病」が26.6%、
「がん」が 25.6%、「心疾患」が10.4%、「脳血管疾患」が8.9%、「難病」が8.1%、「肝炎」が3.1%。
企業規模が大きくなるほど疾病罹患者の割合が高くなる傾向にあると報告されています。
疾病に罹患した従業員の休職状況については、「糖尿病」や「心疾患」、「難病」、
「肝炎」ではほとんどが休職することなく、通院治療をしています。
一方、「がん」と「脳血管疾患」は休職を経て通院治療をしている割合が高くなっています。
治療と仕事の両立支援制度の課題については、「休職者の代替要員が難しい」と答えた割合が65.9%と最も高く、
次いで「病状に応じた配慮や就業上の措置の判断」、「職場の上司・同僚等の負担への対応」、
「就業継続可否または復職可否の判断」、「柔軟な労働時間制度または就業形態の設置」が続いています。
治療と就業の両立支援
2025年6月公布の改正労働施策総合推進法に基づき、2026年4月以降、
事業主には「職場における治療と就業の両立支援」に対する取り組みが求められています。
治療と就業の両立支援(以下、両立支援)とは、病気を抱える労働者に対し、
治療を受けながら安心して働き続けることができるように、
本人からの相談に応じて適切に対応できる体制や環境を整備し、必要な就業上の調整、配慮を行うことを指します。
厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」(以下、指針)には、同法第27条3の規定に基づき、
両立支援にあたっての留意事項や支援に向けた環境整備、実際の支援の進め方などが示されています。
労働者に対する健康確保措置に ついて、事業主は労働安全衛生法による
健康診断に基づく健康管理やメンタルヘルス対策などが義務付けられています。
両立支援への取り組みはその一環として位置付けられ、治療を受ける労働者に対し、
就業により疾病などの症状が増悪することを防止し、就業上の措置や治療に対する配慮を行うなど、
継続的かつ計画的な健康保持増進措置の実施に努めることが必要となります。
両立支援に取り組む意義としては、継続的な人材の確保、労働者の安心感やモチベーションの向上による人材の定着、
生産性の向上、健康経営の実現、多様な人材の活用による組織や事業の活性化、組織としての社会的責任の実現などが期待されています。
両立支援への取り組み
指針における両立支援とは、雇用形態にかかわらずすべての労働者を対象とし、
反復継続した治療が必要であると医師が判断した私傷病を対象疾病としています。
両立支援は、労働者本人からの支援を求める申し出を受けたことを契機に取り組むことが基本となります。
企業においては、労働者が安心して相談や支援の申し出を行うことができるように、
指針に基づき、平時から必要な措置を講じることが重要です。
取り組みを行うにあたっては、まず事業主自らが両立支援に関する方針を表明して周知し、
疾病やその治療に対する誤解、偏見等が生じないように、
研修などを通じて従業員の意識啓発を行うことから始めましょう。
上司や同僚、人事労務担当者、産業保健スタッフなどの役割と対応手順を整理し、 相談窓口を設置することも必要です。
症状、治療の状況など疾病に関する個人情報の取り扱いについては、適切な情報管理体制の整備も求められます。
また、短時間の治療を定期的に繰り返す場合や就業時間に一定の制限が必要な場合、
通勤の負担を軽減する必要がある場合など、個別事例の特性に応じた治療のための配慮も必要となります。
各事業場の実情に応じて、時間単位の年次有給休暇や傷病休暇などの
休暇制度、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度など社内制度の導入について検討を行いましょう。
両立支援の進め方 1
まず、支援を必要とする労働者は事業主に申し出を行い、主治医から症状や治療の状況、
就業継続の可否に関する意見、配慮が必要な事項など支援に関する情報を集て事業主に提出します。
事業主は、主治医や産業医などの意見を勘案した上で就業の可否を判断します。
判断にあたっては、できる限り配置転換や作業時間の短縮など就業継続が可能となるよう留意しましょう。
入院など休業を要しない状況下において、就業継続が可能と事業主が判断した場合は、
就業上の措置や治療に対する配慮の内容などを検討し、「両立支援プラン」を作成して実施します。
治療の経過によって必要な措置などが変わることも考慮し、
適宜本人の状況を確認しながらプランの見直しを行う必要があります。
一方、入院などによる休業を要する状況下において、長期の休業が必要と事業主が判断した場合は、
当該労働者に休業に関する制度や職場復帰の手順などについて情報提供を行った上で休業を開始します。
休業期間中は、あらかじめ定めた方法等で定期的に本人と連絡を取り、
活用可能な支援制度などの情報提供も含めてフォローアッ プを行うことが重要です。
症状が回復した際には、事業主は、主治医からの症状や治療の状況、就業継続に関する意見聴取をはじめ、
本人の意向確認、復帰予定の職場の意見聴取を行い、配慮が必要な事項なども含め総合的に職場復帰の可否を判断します。
復帰可能と判断した場合は、すぐに通常勤務に復帰できるとは限らないことに留意した上で、
復帰日を記載した「職場復帰支援プラン」を作成し、共有しましょう。
また、一時的に負担がかかる周囲の同僚や上司に対しては、本人の承諾を得た上で必要な情報に限り情報を共有して理解を得、
過度な負担がかからないように組織的な支援を行うことが望ましいです。
なお指針には、主な疾病別の留意事項のほか、労働者が主治医に勤務状況を提供し、
その情報に基づいて主治医が就業上の意見などを提示する「両立支援カード」や
「両立支援プラン/職場復帰支援プラン」などの様式例集が添付されているので、参照してください。
両立支援の進め方2
支援を必要とする労働者のなかには、病状の悪化により両立が困難になる場合や、
業務遂行に影響を及ぼしうる状態が継続する場合、職場復帰後に再発する場合もあるでしょう。
その時は本人の意向も考慮しつつ、主治医や産業医などに意見を求めながら慎重に対応し、
著しく増悪するおそれがある場合には、労働安全衛生法第68条に基づいて就業禁止の措置を取る必要があります。
両立支援を行うにあたっては、あらかじめ治療後の経過が悪いケースも念頭に置きながら定期的に状況を確認し、
その内容に合わせて必要な対応ができるように、事前に体制や環境の整備を行っておくことがポイントとなります。
