コラム

男性の育児休業取得促進に有効な「両立支援等助成金」

男性の育児休業の取得率は年々上昇しています。
企業としても育児・介護休業法の改正を踏まえて男性の育児休業の取得率向上を図っていかなければなりません。
ここでは、まだ男性の育児休業取得率が低い中小企業事業者を対象とした「両立支援等助成金」について紹介します。

「令和5年度雇用均等基本調査」 (厚生労働省)によると、
育児休業取得者の割合は女性が84.1%(前 3.9%増、男性は統計調査が始まって以来最高の「30.1%」(同13.0%増)。
育児・介護休業法の改正等を背景に男性の育児休業取得率は高まってはいるものの、
まだ男女間の取得率には開きがあります。

男性の育児休業取得を促進する法改正

少子化が進む中、共働きが当たり前になっている現代においては
夫婦で協力して育児をする環境が整わなければ、仕事と育児の両立は難しく、出生率の向上は図れません。

そこで政府は、これまで幾多の育児・介護休業法の改正を行い、
仕事と育児の両立や男性の育 児参加を促進してきました。

例えば、2010年6月には「パパ・ママ育休プラス」を創設。
原則子が1歳に達するまでとする育児休業について、夫婦がともに育児休業を取得する場合には、
最長で子が1歳2ヵ月に達するまで延長して育児休業を取得できることとしました。

また、出生後8週間以内に父親等が育児休業を取得した場合には、
再度育児休業を取得できる、いわゆる「パパ休暇」がありましたが、
この制度は、2022年10月1日施行の出生時育児休業制度の創設により廃止されました。

新たな出生時育児休業制度(産後パパ育休)では、主に男性が子の出生後8週間以内に、
最大で4週間(28日)を1回または2回に分割して取得できることとしました。

また、労使協定の締結があれば、
就業日数の制限(休業期間中の所定労働日所定労働時間の半分)があるものの、
休業期間中でも就業が可能としました。

さらに、従来の育児休業は原則子が1歳に達するまで1回の取得でしたが、
改正により2回に分割しての取得ができることになり、産後パパ育休と併せて取得することもできます。
組み合わせることによって、子が1歳になるまでに最大4回の分割取得も可能となりました。
その他、保育所待機等により育児休業を1歳6ヵ月または2歳まで延長する場合も、
1歳以降の育児休業期間の途中に、夫婦で交代して休業することも可能となりました。

このように、夫婦の状況に合わせて育児休業を分割して取得することができるようになり、
夫と妻が交代で育児休業を取得するなどして、仕事と育児の両立がしやすい環境が整いつつあります。

出生時両立支援コースの活用

これからは、育児や介護など労働者のライフサイクルに合わせた働き方を選べる職場環境の整備が、
企業の人材確保に大きな影響を与える時代となります。

「両立支援等助成金」は、労働者が働きながら育児や介護を行うことができる職場環境を整備し、
運用する企業への支援を目的とするものです。
両立支援等助成金には6つのコースがあり、その一つに男性の育児休業取得を促進するための
「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」があります。

男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行った上で、
男性の育児休業取得率の上昇を図った事業主に対して助成するものです。
本コースの助成金は、中小企業法に基づく中小企業のみを支給対象とするもので、
第1種、第2種の2つがあります。



第1種の主なポイント

「第1種」は、男性従業員(雇用保険の被保険者であること)が育児休業を取得しやすいように
育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数実施することや、
育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しに係る規定等を策定し、
業務体制を整備するなどの要件が必要です。
また、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得させた男性労働者が出た場合
(育児休業開始日から支給申請日まで継続雇用していること)に支給されます。

必要な雇用環境整備措置としては、
1雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施、
2育児休業に関する相談体制の整備 (相談窓口の設置)、
3育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供、
4育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知、
5育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための
「業務の配分」または「人員の配置」の見直し、といったものがあります。

なお、育児休業制度として「産後パパ育休」を含むものでなければなりません。
また、これらの複数の措置は育児休業の開始前日までに行う必要があります。
実施が必要な雇用環境整備措置の数は、助成金の対象従業員の何人目であるか、
および申請事業主の「産後パパ育休」の申請期限により異なります。

対象となる男性従業員の育児休業取得が3人までを対象とし、
1人目については産後パパ育休の申出期限が2週間前まであれば
2つ以上(2人目は3つ以上、3人目 は4つ以上)の措置を、
2週間前より長い場合は3つ以上(2人目は4つ以上、3人目は5つ全て)の措置を講じなければなりません。
なお、1人目のときに措置を4つ以上講ずると、助成金が加算されます。

また、雇用環境整備措置を終えた後、
子の出生後8週間(当日を含む57日間)以内に男性従業員の育児休業を開始させるにあたり、
産後パパ育休については、対象となる男性従業員の人数ごとに設定された、
連続した日数を取得していなければなりません。

対象となる男性従業員の育児休業取得1人目は育児休業取得日数が
連続して5日以上(2人目は10日以上、3人目は14日以上)となり、
期間中の所定労働日数が1人目は4日以上(2人目は8日以上、3人目は11日以上) あることが必要です。

第2種の主なポイント

第2種は第1種の助成金を受給していることを前提に、男性従業員の育休取得率を上げるために、
前述の雇用環境整備措置を複数講じることが必要です。

また、男性従業員の取得率を第1種(1人目)申請時の事業年度の
次の事業年度から3年度以内に30ポイント以上上昇させていることが必要です。
具体的には、例えば、第1種の申請年度の育休取得率が10%だった場合、
40%まで上昇させなければなりません。

ただし、第1種(1人目)の申請年度内に配偶者が出産した対象男性従業員が5人未満で、
かつ、当該年度内の男性従業員の育児休業取得率が70%以上でも支給対象となります。

第1種および第2種の助成金の額は図表の通りです。
2025年度には拡充が予定されていますので、事前に確認しましょう。



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