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労務トラブル回避 Q & A こんなときどうする
今月の相談
会社が貸与したパソコンのモニタリングの可否について
Q 従業員の1人が業務中に会社のパソコンを使ってインターネットでゲームをしていたことが判明しました。
そこで、今後の会社の方針として、会社貸与のパソコンを適宜モニタリングすることを通知しましたが、
プライバシーの侵害に当たると主張する者がいます。
A 今日では、パソコン(以下、PC)は業務上必要不可欠なものであり、従業員1人1台が当たり前となっています。
しかし、そのPCは会社の所有物であり、業務遂行のために従業員に貸与しているものです。
インターネットへの接続料等、その使用に係る費用は会社が負担しています。
したがって、就業規則等で従業員がそれを私的に利用することを禁止することは何ら問題ありません。
よく問題となる会社PCの私的利用には、
今回の相談のような業務中における私的目的でのウェブサイトの閲覧や
メールの送受信などのほか、ネットゲームの利用などがあります。
労働者には、労働契約上の「職務専念義務(使用者の指揮命令に服しつつ職務を誠実に遂行すべき義務、
就業時間中は職務に専念し他の私的活動を差し控える義務)」があります。
したがって、就業時間中の私的な目的でのインターネット利用やメールの送受信は、
職務専念義務違反にあたり、会社としてそのような事態が発覚したときに
放置することは職場秩序が乱れる要因となります。
会社貸与のPCの私的利用を防ぐには、
1定期的にインターネットの利用状況を調査・モニタリング(監視) する、
2業務と関係ないウェブサイト(SNSやチャット等)をフィルタリングし、
PCにアクセス制限をかけるなどの方法があります。
なお、1の方法による場合には、その旨を就業規則等で会社貸与のPC利用規程として定めておくべきです。
具体的には、就業時間中における業務と無関係なウェブサイトの閲覧禁止、私的メールの送受信の禁止、
インターネット上からのソフトウェアやアプリのダウンロードの禁止、
会社の機密情報の持ち出し禁止などを規定化しておくことです。
さらに、これらの規定に違反した場合には懲戒処分となることもあわせて定めておく必要があります。
会社PCの私的利用に伴う懲戒処分の程度は、私的利用の頻度・内容によりますが、
注意・指導後も繰り返し私的利用が行われているような場合には、懲戒処分の程度も重くなるのが一般的です。
ところで、そもそもPCは会社が従業員に貸与したものであり、
会社には従業員のインターネットの利用状況やメールの送受信の調査・モニタリングなどをする権限があると言えます。
しかし、私的利用防止を目的とした調査とはいえ、それを行うことは従業員のプライバシーを侵害する可能性があり、
その必要性が問われ、一定の制約を受けることとなります。
したがって、モニタリングに関して以下のような点に留意して実施することが大切です。
1モニタリングを通じて取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、
社内規程などに定めるとともに、従業員に明示すること。
2モニタリングの実施に関する責任者とその権限を明確にすること。
実施責任や権限のない者がモニタリングしたり、
責任や権限のある者でもモニタリングの必要性や合理的な理由がなく行うと違法となる場合もあるため注意しなければなりません。
3 モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監査または確認を行うこと。
これらのほか、貸与時にモニタリングが行われる場合があることを記載した使用誓約書等に、
従業員に署名してもらい、個別の同意を取っておくことで今回のような問題に対応することができるでしょう。