コラム

2025年4月施行!共働き・共育てを支援する新制度

雇用保険法の改正を含む「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が2024年6月5日に成立しました。
これを受けて新たに創設された支援制度「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が、2025年4月にスタートします。
そこで、従業員に周知するための要点をまとめます。



1. 出生後休業支援給付金

現在は、雇用保険の被保険者である労働者が育児休業法に基づく育児休業をすると、
休業中の所得の補填として雇用保険制度から育児休業給付の支給を受けることができます。
しかし、育児休業することなく働き、給料の支払いを受けることに比べれば、手取り額が低くなってしまいます。
これが、子どもの父母ともに育児休業を取得することや、男性の育児休業の取得が進まない理由の一つともいわれています。

そこで、男性の育児参加をさらに促進することを目的として新たに創設されたのが、「出生後休業支援給付金」です。
出生後休業支援給付金は、被保険者(一般被保険者及び高年齢被保険者に限る)と
その配偶者が子の出生日から起算して8週間以内に14日以上の育児休業 (出生時育児休業) を取得する場合に、
最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が支給されます。

これにより、現行の育児休業給付金(育児休業開始日から180日間は67%)と合わせることで、給付率は80%となります。
この80%という数値は、休業前の額面の給与額から源泉控除分(所得税、社会保険料、住民税など)を差し引いた額とほぼ一致することになるので、
休業前の手取り金額とほぼ同じ額(実質100%)が給付されるということになります(図表1参照)。



<支給要件>

出生後休業支援給付金の支給を受けるには、男性は産後パパ育休として子どもの出生後8週間以内、
女性は産後休業後8週間以内に14日以上最大4週間(28日)以内の期間を定めて出生後育児休業を取得することが必要です。
出生後育児休業は28日を上限に2回まで分割取得することができます。

なお、被保険者の中で配偶者が専業主婦(夫)であるなど雇用保険の被保険者でない、
もしくは被保険者がひとり親である場合は、配偶者が育児休業を取得していなくても出生後休業支援給付金が支給されます。

なお、9月27日に「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案」が、厚生労働省より公表されました。
それによると、出生後休業支援給付金の支援対象となる休業は、
育児休業給付金または出生時育児休業給付金の支給対象となる休業とすることから、
出生後の分割取得ができるのは、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の支給の対象となる休業が分割できる範囲とするとしています。

また、その支給申請手続きについては、申請者の負担を最小限とするため、原則として事業主経由で行うこととし、
育児休業給付金の初回申請または出生時育児休業給付金の申請と併せて行うこととしています。

2. 育児時短就業給付金

育児休業法に基づく育児短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)とは、
1日の所定労働時間を原則6時間に短縮して働く制度です。
育児を理由とした短時間勤務の場合、
対象は原則3歳未満の子どもを育てる男女従業員で、期間を定めて雇用されている者も対象となります。
育児短時間勤務制度は育児をしながら働く従業員への両立支援になるものの、
実労働時間が少なくなる分、当然ながらフルタイム勤務と比べて収入が減ってしまいます。

しかし、現状では育児のために短時間勤務制度を選択して賃金が減少した場合、それを補填するような給付金はありません。
「共働き・共育て」の推進や、育児休業後の労働者が育児とキャリア形成を両立できるよう、
柔軟な働き方として短時間勤務制度を選択できるようにすることが求められている中で、
育児短時間勤務による収入減を補うことで短時間勤務を選びやすくするために創設されたのが「育児時短就業給付金」です。

育児時短就業給付金は、子育て中の時短勤務者を対象に育児休業給付とは別に支給されます。

<支給要件>

育児時短就業給付金の支給を受けるには、次の要件を満たさなければなりません。

1被保険者が、2歳に満たない子を養育するために所定労働時間を短縮している時短勤務者であること。
2時短勤務開始日前の2年間に、みなし被保険者期間が12ヵ月以上あること。
ここでいう 「みなし被保険者期間」とは「被保険者期間に相当する期間」のことであり、
時短勤務を開始する日を被保険者でなくなった日(資格喪失日) とみなして計算します。

支給条件に性別による制限はなく、男性、女性のどちらも給付の対象となります。
この給付金は、単に時短勤務を推奨するものではなく、育児休業よりも時短勤務を、
さらには時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する目的で創設されています。
これを前提に、給付率は時短勤務中に支払われた賃金の10%となります。

なお、時短就業期間中に支払われた賃金の額と給付金の合計額が時短前の賃金を超えないように給付率を調整する必要があり、
仮に時短前賃金額を超えた場合には給付率が減額されることになります (図表2参照)。
厚生労働省は2025年4月から、従業員100人を超える企業に対し、
男性従業員の育休取得率の目標を設定し、公表するよう義務付けています。

さらに政府は、2025年までに男性の育休取得率50%を目指すとしています。
2025年4月より始まる出生後休業支援給付金により、
男性が育児休業を取得しない理由の上位に見られる「収入が低下するから」という不安が実質的に解消されることとなります。

また、これまで育児のための時短勤務は女性従業員の利用が中心でしたが、
「収入が低下するから」という不安が実質的に解消されれば、男性従業員の活用も増えてくるでしょう。
こうした育児休業取得環境が整備されていくなかで、
企業としても就業規則などの改定や従業員への周知を漏れなく行えるよう、早めに情報を収集して社内準備を行っておきましょう。



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