高年齢雇用継続給付の給付率縮小と対応策
定年後65歳までの雇用確保義務化に伴う影響も!?
2025年3月末日をもって、定年後の継続雇用制度の経過措置が終了すると同時に、
定年後の継続雇用に伴う賃金の低下をサポートしていた
高年齢雇用継続給付の給付率も縮小されることになりました。
ここでは、改正内容と高年齢者処遇の方向性を探ります。
継続雇用制度の経過措置終了
現在、定年年齢は満60歳を下回ることができず、かつ、満65歳未満の定年年齢を定めている企業については、
1「65歳までの定年引き上げ」、
2「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」、
3「定年制の廃止」の3つのうち、いずれかの高年齢者雇用確保措置を
講じなければならないことになっています(高年齢者雇用安定法第8条、第9条)。
なお、2の継続雇用制度を導入する場合には、経過措置として、定年後継続雇用の対象労働者については、
労使協定で一定の基準を定めることにより、その基準に該当する者を対象とすることが認められていました。
「令和5年高年齢者雇用状況等報告」(厚生労働省)によれば、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%。
そのうち、継続雇用制度導入による雇用確保措置が69.2%と最も多くなっています。
また、継続雇用制度による雇用確保措置を講じている企業のうち、前述の経過措置適用企業は15.4%となっています。
しかし、この経過措置は2025年3月31日に終了し、2025年4月1日以降は、
定年を迎えた労働者が継続雇用を希望する場合には制限なく
希望者全員の65歳までの雇用機会の確保が義務化されます。
したがって、継続雇用制度を設けている企業のうち経過措置を講じている企業は、継続雇用に関する労使協定の廃止、
就業規則の改定を含め、定年後継続雇用となる高年齢者の活用を踏まえた人事制度の見直しを検討しなければなりません。
高年齢雇用継続給付の縮小
雇用保険法に基づく高年齢雇用 継続給付は、高年齢者の雇用継続を援助するための給付金です。
雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳から65歳未満の労働者が定年後の再雇用などにより、
60歳以後の各月に支払われる賃金が原則として60歳時点の賃金と比べて75%未満となった状態で
継続雇用される場合、65歳に達するまでの間、60歳以後の各月の賃金の15%を上限に支給されます。
2025年4月1日以降は、この支給率が60歳に到達する者から順次最大10%に縮小されることになっています。
なお、高年齢雇用継続給付は段階的に縮小され、将来的には廃止されることになっています。
定年後60歳以上の高年齢者を多く雇用している企業については、高年齢雇用継続給付の縮小に対応しなければ、
60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者である労働者の実質賃金が減少することになります。
定年後に継続雇用される高齢者にとって収入の減少はモチベーションの低下につながりかねません。
中小企業にとって労働力人口が減少していく中で、
経験や技術力がある60歳以降の高年齢者の活用はますます重要なものとなってきます。
縮小分の5%を含め賃金制度の見直しが必要となります。
高年齢労働者の処遇改善のための助成金
厚生労働省では、高年齢雇用継続給付の支給率の減少による激変緩和措置の一つとして、
60歳から64歳までの高年齢労働者の賃金規定等の増額改定に取り組む事業主に対して
「高年齢労働者処遇改善促進助成金」を支給することとしています。
詳しくは厚生労働省のウェブサイトを参照してください。
