労務トラブル回避Q&Aこんなときどうする
固定残業代における欠勤控除について
Q 当社では基本給等とは別に月平均所定労働日数20日、
1日1時間のみなし残業として20時間分を固定残業代で支払い、それを超えた分は別途支払っています。
1日欠勤した社員の固定残業代から1時間分控除としたところ、違法と言われましたがどうなのでしょうか。
A 固定残業代は、毎月、一定の時間外労働数の割増賃金を定額で支払うものであり、
定額残業代、みなし残業代とも言われています。
この固定残業代を採用する場合には、
1基本給等固定的な賃金と固定残業代が区分して支払われていること、
2固定残業代として時間外労働の何時間分に相当するものなのかということ、
3固定残業代を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払うことの3つについて、
労働契約書や就業規則上、明確になっていなければなりません。
したがって、例えば「基本給30万円(固定残業代を含む)」などとするだけでは固定残業代の要件を満たしていないこととなります。
また、固定残業代を採用している場合には、残業の有無にかかわらず、固定残業代は満額支払わなければなりません。
例えば、月20時間分の残業を固定残業代としている場合、
労働者が実際には10時間しか残業をしていなくても、20時間分の残業代を支払う必要があります。
しかし、仮に労働者が25時間の残業をした場合は、
固定残業代分を超える5時間分の残業代を別に払わなければなりません。
また、固定残業代を導入していることを理由に労働者の労働時間管理が適正に行われていないことがありますが、
欠勤、遅刻、早退を含めて労働時間を正確に把握し、固定残業時間数を超える残業の有無を確認する必要があります。
では、欠勤した場合と固定残業代との関係を見てみましょう。
仮に欠勤した際に固定残業代を含めて控除するとして、
今回の場合は月平均所定労働日数20日で20時間分の固定残業代ですので、
1日欠勤に対して1時間分を控除することになります。
欠勤に関しては、ノーワーク・ノーペイの原則で就業規則や給与規程の欠勤控除規定に基づき欠勤日数分の賃金を控除することは問題ありません。
固定残業代についても、就業規則や給与規程に固定残業代も欠勤控除の対象とすること
及びその計算方法が定められている場合には控除することができます。
今回のケースを例にとれば、1日欠勤したときは1時間分を控除し、その月は19時間分の固定残業代となります。
その結果、その月の時間外労働時間数が19時間以内であれば19時間分を固定残業代として支払い、
19時間を超える残業がある場合には別途支払うことになります。
しかし、固定残業代を欠勤控除の対象としなければ、時間外労働が月20時間までは別途支払う必要はありません。
欠勤がある都度、固定残業代を含めて残業代を再計算し直す煩雑さを考えると、
欠勤控除の対象に固定残業代を含めるか否かは、その会社の時間外労働の実態によることになるでしょう。
ただし、就業規則に「傷病等により30日以上欠勤した場合には、休職とする」など、
休職条件として長期欠勤要件を定めている場合があります。
ノーワーク・ノーペイの原則があるとはいえ、欠勤控除の対象として、
固定残業代を含めていないことによって固定残業代の支払いを求められることも想定されます。
しかし、欠勤事由を問わず、長期間にわたって全く就労していない場合において、
基本給や他の手当は控除されて支払われない一方で、 固定残業手当だけが支払われるのは適切ではありません。
したがって、例えば、「月の所定労働日数の2分の1以上欠勤する場合」といったように、
何日以上の欠勤で固定残業代も控除となるのかを明確にしておく必要があるでしょう。
今月のポイント
ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、就業規則や給与規程に固定残業代も欠勤控除の対象とすること及びその計算方法を定めていれば、
欠勤した場合に固定残業代を控除することは問題ない。