コラム

今月の相談 月をまたぐ振替休日の取得について



Q 当社は製造業を営んでいます。
先日、急な受注が入ったため従業員に休日出勤してもらい、翌月に振替休日を取るように指示したところ、
従業員過半数代表者から翌月振替は違法だとの指摘を受けました。 月をまたぐ振替休日の取得は問題があるのでしょうか。

A 振替休日とは、就業規則等に定められている会社の所定休日を労働日とし、
所定労働日を休日にするという、いわゆる休日と労働日の振替のことをいいます。
同じような措置に「代休」があります。

これらの違いは、振替休日を行うにはあらかじめ休日を振り替える通知をする必要があることです。
これにより所定の休日は労働日扱いとなるため、休日出勤とはなりません。

しかし、代休は休日出勤をさせた後、事後的に代わりの休日を与えることになるので、休日出勤である事実に変わりはないことになります。
行政通達でも「就業規則において休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合、
休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、
当該休日は労働日となり、休日に労働させることにはならない」とされています(昭63.3.14基発150・婦発47)。

したがって、振替休日を行うためには、「就業規則上で休日と定められた日に労働する場合は休日の振替を行うこと」などと、
就業規則や労働契約に定めておく必要があります。
なお、振替休日によって所定の休日に労働させても、その日は労働日となるので、休日労働に対する割増賃金は発生しません。
ただし、休日を振り替えたことにより、その週の法定労働時間(40時間)を超える労働時間については
時間外労働となるので割増賃金(2割5分以上) の支払いが必要となります。

振替休日により振り替えるべき日の時期については、就業規則等の根拠規定があればそれによりますが、
法的にいつまでに振り替えるべきかの振替期限が明確に定められているわけではありません。
行政通達においても、「就業規則においてできる限り、休日振替の具体的事由と振り替えるべき日を規定することが望ましい」とした上で、
「なお、振り替えるべき日については、振り替えられた日以降できる限り近接している日が望ましい」(昭23.7.5基発968)とされている程度です。
なお、「週40時間」とする週の法定労働時間を前提に、同一週内で休日振替を行えば割増賃金の支払いは必要ありません。

同一週内での振替が難しい場合には、振替休日を行った月と同じ賃金計算期間内で行うという運用でも差し支えありません。
例えば、給与の支払いが毎月末日締めの会社であれば、
1日から末日までの間の休日出勤についてはその期間内に振替休日を取るというものです。
なお、前述の通り休日を振り替えて勤務した結果、その週の労働時間の合計が法定労働時間 (40時間) を超過した場合には、
超過分の労働時間に対して時間外割増賃金の支払いが必要です。
しかし、月(または同一賃金計算期間) をまたぐ場合は、同一賃金計算期間内に振替休日を取っていないため、
まずはいったん休日勤務分の賃金について割増分を含めて支払わなければ、
労働基準法第24条の賃金の全額払いの原則に違反することになります。

したがって、一賃金支払期間内に振替休日を取ることができず、
その後の賃金支払期間に振替休日を取得する場合には、
休日出勤した賃金支払期間の賃金については割増分を含めて休日労働分を支払い、
振替休日を取得した賃金支払期間の賃金について割増分を賃金から控除する方法で調整することになります。
このように、振替休日を休日労働のあった日の属する賃金支払期間内に取得させるようにしないと給与計算が煩雑になりますので、
就業規則などで振替休日の取得ルールを明確にしておきましょう。

今月のポイント

振替休日について法的な振替期限は定められていない。
ただし、月(または同一賃金計算期間)をまたぐ振替休日は、いったん休日勤務分の賃金を支払い、
休日を取得した月に振替休日分の賃金を控除するなど給与計算が煩雑になるので注意が必要。


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