企業が商号変更をする理由を考える
カタカナや英字の使用が増加傾向に
商号(社名)は創業者の信念や事業の歴史などが込められた、企業にとって看板のようなものです。
しかし、時代の変化にともなって商号を変更する企業も少なくありません。
そこで、東京商エリサーチが公表した「2024年『商号変更』 動向調査」から商号変更の傾向を見ていきます。
2万社以上が商号変更
東京商工リサーチが、同社の企業データベースをもとに「商号変更」の動向調査を実施したところ、
2023年8月から2024年7月の1年間に商号変更を行った企業は2万2058社に上ることがわかりました。
これは、同データベースに登録された約429万社の0.51%にあたります。
また、商号変更のうち組織変更に伴う法人格の変更は3241社となっています。
産業別で見ると、商号変更が最も多かったのは「サービス業他」の 8812社(構成比 39.95%)。
次いで、「建設業」の2956社(同13.40%)、「不 動産業」の2030社(同9.20%)、「小売業」の1896社 (同8.60%) と続いています。
ただし、商号変更率(その産業の全企業数に対する変更した企業数の割合)が最も高かったのは「金融・保険業」で0.86%。
投資ファンドが運営する特定目的会社(SPC)が多いのが特徴です。
約9割が業歴50年未満
次に業歴別で見ると、「10年未満」の企業が44.71%で最多。
次いで、「10年以上20年未満」 が18.55%、「20年以上30年未満」が12.03%と続き、
業歴50年未満が約9割を占めています。
全企業に対する変更率も「10年未満」(0.84%)、「10年以上20年未満」(0.51%)、
「20年以上30年未満」(0.51%) となって おり、
調査では「商号は、業歴が長いほど変更しづらいのかもしれない」と考察しています。
自社をアピールする機会に
商号の表記について変更の前後で文字種類の構成比を比較した結果は図表の通り。
変更後の最多は「カタカナのみ」の25.13% (5543社) で、変更前の24.68%(5444社)から微増しています。
次に多かった「英字のみ」の23.98%(5289社) は、変更前の16.47% (3632社) から7.51ポイントの増加。
一方で、「漢字のみ」は28.17% (6213社) から21.58%(4760社)、
「カタカナと漢字」は15.18% (3349社) から11.76% (2594社)と減少しており、
漢字使用よりもカタカナや英字の使用を選ぶ傾向がうかがえます。
例えば、総合印刷会社の「凸版印刷」は、
2023年10月に持株会社体制へ移行するタイミングで「TOPPANホールディングス」に変更。
同社はその理由を「グローバル企業として全世界で統一したブランドを使用していくことを意図した」としています。
調査では、
「商号変更は、企業が新たな戦略の展開やイメージの一新をステークホルダーにアピールするためのアクションでもある」と考察。
そこから事業拡大へとつなげるためにも、将来を見据えた商号にすることが重要といえます。