コラム

会社の商品を不正転売した従業員への対応について



Q商品の棚卸をしていたら在庫が合わないので調べたところ、
在庫管理をしている従業員が商品を盗んでインターネット上で転売していることがわかりました。
これから本人に事実確認をして処分をしようと思いますが、どのように対応すればよいでしょうか。

A商品の在庫は会社が占有する財物であり、それを不法に自分のものとすると窃盗罪が成立することもあります。
商品の在庫管理を一部の従業員に任せっきりにしていると、商品が窃取されて減少していることについて発覚するのが遅れ、
発覚したときにはすでに多額の損失になっていることもありますので十分に注意しなければなりません。

会社のお金を着服したり、商品を盗んだり、また盗んだ商品をネット等で転売するような不正行為を行った従業員は、
刑事上 (業務上横領罪、窃盗罪)、民事上(損害賠償金を払う責任)、就業規則上の懲戒(懲戒処分)の3つの責任を負うことになります。

商品の窃盗や業務上横領が疑われる場合には、まず本人に問いただす前に、できる限りの事前調査をして、証拠を収集すべきでしょう。
しかも、慎重に進めないと、本人に気づかれてさらなる隠蔽工作をされ、結局確たる証拠が見つからず対応できないことにもなり得ます。

本人が業務上横領を認めず、かつ証拠も不十分ですと、損害賠償請求は認められず、
懲戒解雇や解雇の処分を行っても不当解雇とされてしまう恐れもあります。
場合によっては、逆に名誉毀損による損害賠償を請求されたりしかねません。

ネット上で会社の商品を転売しているような場合は、本人のアカウントにログインして、
販売履歴を確認する必要がありますので、弁護士に相談して社内PCや従業員のPCの回収・確認などの対応が必要ともなります。

また、事情聴取を行う場合には、予告なく本人を呼び出して確認すべきでしょう。
事前に予告をしてしまうと証拠隠滅されることにもなります。
事情聴取においては、本人が窃盗や業務上横領を認めるか否かは別として、
本人の言い分をすべて録音するなど、記録を残しておくことが重要です。
会社の提示した証拠資料との関係で矛盾する部分があっても何らかの記録を残しておかないと、
後々言った言わないの水掛け論になる場合があります。

事情聴取に基づき、本人がその事実を認めたり、また証拠等から従業員の不正行為が明らかな場合には、
損害が少ない場合でも、窃盗や業務上横領の犯罪行為であり、会社に対する重大な背任行為ですので、懲戒処分が可能となります。
また、被害額の大小や発覚後の従業員の対応によっては、告訴して、刑事上の責任を追及するか否かも検討しなければなりません。
刑事告訴するには、警察による犯罪捜査を受けることにもなり、不祥事が社内外に漏れる可能性があるので慎重に検討する必要もあります。
また、従業員が事実を認めたときは、就業規則に基づき懲戒処分することになります。

懲戒処分の種類には戒告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがありますが、
窃盗や業務上横領に対する懲戒処分として選択されるのは、諭旨解雇や懲戒解雇が一般的です。
なお、解雇が有効と判断されるには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる必要があります (労働契約法第16条)。
また懲戒解雇するにあたっては、労働契約法第15条を踏まえて、懲戒処分の相当性の有無は、被害額や横領行為の回数・期間、
横領した従業員の地位や勤怠状況、従業員に懲戒解雇の根拠の説明や弁明の機会を与えたか否か、過去の懲戒事例との比較、
といった要素が考慮されるほか、 裁判例や同業他社における先例なども照らして判断されることになります。

したがって、懲戒解雇するにあたっては、十分な事前調査や事情聴取に基づき、横領の事実や被害金額を確認しておくことが重要です。

今月のポイント

事前調査をして証拠を集めたうえで事情聴取をし、従業員が事実を認めた場合は就業規則に基づいて懲戒処分を行う。
隠蔽工作等をされないように、調査や聴取は 慎重に行うことが重要。


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