コラム

社員の定期健康診断以外の検査の費用負担について

Q 先日、社員から「人間ドックを受診したので、毎年1回会社で実施している定期健康診断を省略し、
その費用分を支払ってほしい」と言われました。支払う義務があるのでしょうか。 (B社・総務部)

A 定期健康診断は、常時使用する労働者について、会社 (事業者) がその健康状態を把握し、
労働時間の短縮、 作業転換等の事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症の防止、
生活習慣病等の増悪防止を図ることなどを目的としたものです。

事業者は、その事業規模を問わず、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回、定期健康診断を行わなければなりません (安衛則第44条)。
定期健康診断を実施しないことは労働安全衛生法違反となり、50万円以下の罰金を科されることにもなります。

また、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、「定期健康診断結果報告書」を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
定期健康診断の法定受診項目は、既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査、身長、体重、視力及び聴力の検査、
胸部エックス線検査及び喀痰検査など全部で11項目あります (安衛則 第43条)。

ただし、一定の項目について医師が必要ないと認めた場合には省略することができます。
労働安全衛生法では、「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。
ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、
他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、
その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない」(第66条第5項) と定め、
事業者が指定する医師以外の医師による健康診断を受ける「医師選択の自由」を認めています。

したがって、労働者が会社の指定した医師による健康診断の受診を希望しない場合は、別の医師による健康診断を受けて、
その結果を事業者に提出することでも差し支えありません。
たとえばB社のように、労働者が個人的に人間ドックで受診し、受診結果の写しを事業者に提出した場合には、
その受診項目については会社が実施する健康診断を受診する必要がありません。
この点は労働者が居住する市町村で実施している健康診断を受診した場合なども同様です。

しかし、人間ドックなどの他の健康診断を受けたとしても、
その受診項目が定期健康診断の法定受診項目を満たしていない場合は、不足項目については改めて健康診断を受診しなければなりません。

なお、事業者は健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者の就業上の措置について、3カ月以内に医師または歯科医師の意見を聴く必要があり、
その意見を勘案して必要がある場合は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければなりません。
定期健康診断は、保険適用外の自由診療のため、受診に要する費用は地域や医療機関によって異なりますが、
労働安全衛生法では、労働者の定期健康診断の受診に要する費用は会社負担となることを定めています。

しかし、会社が負担する費用は、定期健康診断の法定受診項目についてのみです。
それ以外のオプション検査に関しては、自己負担としても問題ありません。
労働者が自ら人間ドックを受診した場合も同様です。

人間ドックの費用は高額です。
事業者によっては、福利厚生の一環として検査費用の全額または一部を負担している場合や、
自治体・健康保険組合からの補助金を利用して一部を負担するケースがありますが、
定期健康診断での法定受診項目に要する費用についてのみ会社が負担することでも差し支えありません。
ただ、こうした費用の一部でも会社が負担することで健康経営の実現につながることも考慮して負担の有無を検討すべきでしょう。

今月のポイント

指定外医療機関で健康診断を受診した場合でも、定期健康診断の法定受診項目の費用については会社が負担しなければならない。
法定外の受診項目の費用について支払い義務はないが、負担することで健康経営の推進につながる。



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