コラム

「令和5年度労働行政運用方針」の概要

2023年4月、厚生労働省により「地方労働行政運営方針」が策定・発表されました。
今年度の労働行政の重点課題として、労働者の賃上げ支援、
個人の主体的なキャリア形成の促進、多様な働き方の選択を支える環境整備への取り組みなどが挙げられています。



「地方労働行政運営方針」とは労働行政を運営する上での重点課題を示したものです。
毎年度春に、厚生労働省により策定・公表されます。各都道府県労働局は、この運営方針に基づいて、各局内の管内事情に沿って、
重点課題・対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的に運用することが求められています。

企業において、その年の労働行政がどのような課題を重視し、調査や監督指導などに取り組むのかを把握することは、適切な労務管理を行う上で欠かすことはできません。

ここでは、2023 (令和5) 年度の行政運営方針のポイントをお伝えします。

最低賃金・賃金の引上げ

最低賃金については、早期に全国加重平均が1000円以上となることを目指して、
地方最低賃金審議会の円滑な運営を図るとともに、問題があるとされる業種などを重点的に監督指導するとしています。

賃金の引上げについては、中小企業や小規模事業者に対し、賃上げしやすい環境整備にこれまで以上に取り組むとしています。
また賃金の支払い方法について、デジタル払いの普及や送金サービスの多様化に応じた対応を可能とするため、
「資金移動業者の口座への賃金支払」に関する周知や指導を行うとしています。

個人の主体的なキャリア形成

産業構造が変化するなか、個人の状況に応じて自主的にキャリア を形成した上で、その能力を発揮させるための環境整備が重要となっています。
その対応として、

1地域のニーズに対応した職業訓練コースの実施等の促進、2 キャ リア形成・学び直しへの支援、
3 デジタル分野に係る公的職業訓練の活用促進再就職支援、 4雇用維持に係る助成金の活用や在籍型 出向などの取り組みに対する支援

など、「人への投資」に関する事項が記されています。

円滑な労働移動

人手不足の問題が顕在化するなか、円滑な労働移動を可能とする環境整備として、労働市場の強化と見える化が重要となります。
就業に必要な情報取得の方法としては、職業情報提供サイト「jobtag」を整備し、必要な職業能力など情報の範囲を広げるとしています。

また、「生涯を通じたキャリア・ プランニング」および 「職業能力証明」の機能を担うツールである「ジョブ・カード」の活用を強化するとともに、
ウェブサイト 「マイジョブ・カード」の積極的な周知や普及促進を図るとしています。
また、労働移動に伴う経済的なリスクを最小化するために、労働 移動支援助成金をはじめとした各種助成金の周知・広報を実施するとしています。
さらには、個々人に応じて、きめ細やかなキャリアサポート・就職支援を継続するために、
ハローワークにおいて、オンラインによる対応、情報発信などの求人者サービスの向上を図ります。

多様な人材の活躍促進

少子化や子育て支援の課題においては、女性の活躍推進や仕事と育児・介護の両立支援、
柔軟な働き方の推進に取り組み、誰もが働きやすい環境の整備が必要となっています。
また、さらなる女性の活躍推進のためにも、常時雇用する労働者数301人以上の事業主に義務付けられた
男女の賃金差異に係る情報公表等を確実に履行するとしています。

そして、男女の賃金差異の要因分析や雇用管理改善への取り 組みを推奨し、企業に対して個別支援を行い、
ウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」の利用促進を図ります。

他にも「マザーズハローワーク」 などによる子育て中の女性への就職支援や、
特別休暇制度の導入などによる不妊治療と仕事との両立支援を実施するとしています。

男性が育児休業を取得しやすくするためにも「産後パパ育休 (出生時育児休業)」を含め、
育児・介護休業法に基づく両立支援制度の周知徹底を図り、不利益取扱いが疑われる場合には、
事業主に対して積極的な報告徴収是正指導等を行うとしています。

雇用形態にかかわらず、公正な待遇を確保するために、パートタ イム・有期雇用労働法および労働者派遣法に基づく
報告徴収や指導監督などを実施し、企業の自主的な取り組みを促して、遵守徹底を図る予定です。
また非正規雇用労働者に対し、正社員化や処遇改善を行う事業主には、キャリアアップ助成金による支援が行われます。
さらに無期転換ルールについては、2024年4月に省令改正等が施行されることを受け、円滑な運用を行うように周知・啓発を図るとしています。

多様なニーズへの就職支援

少子高齢化による急速な人口の減少に対しては、70歳までの就業機会確保に向けた環境整備を行うため、
65歳を超える定年引上 げや継続雇用制度の導入に向けた意識啓発を図るとしています。

60~64歳の高年齢労働者の処遇改善を行う企業や、高年齢者の特性に配慮した安全衛生対策を行う企業に対して、助成金などの支援を行うとしています。
障害者の就労に関しては、ハローワークに専門の担当者を置くなど、多様な障害特性に対応した就労支援を行い、
採用の準備段階から採用後の職場定着まで、貫した支援を行うこととしています。
また、障害者の法定雇用率が2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%と段階的に引上げられる予定を受けて、
企業に対し、業務の選定など障害者の雇入れ支援を行うとしています。

その他、新規学卒者、フリーター等、就職氷河期世代、外国人に対して、就職など支援体制の整備が行われます。

誰もが働きやすい環境の整備

ウィズコロナ・ポストコロナの新しい働き方として、テレワークなどの情報通信技術を利用した働き方をしやすくする環境整備が求められています。
適正な労務管理のもとで良質なテレワークの導入・定着を促進するため、
テレワーク相談センターと連携を図り、ガイドラインや助成金の活用を周知するとしています。

フリーランスに関しても、発注者との契約トラブルなどに対応した相談支援窓口を設け、
取引適正化のための法制度など、安心して働くことのできる環境の整備に取り組むとしています。
また、副業・兼業を推進する企業などへの支援を行い、労働者自身が労働時間や健康状態を管理できるアプリ「マルチジョブ健康管理ツール」の周知や、
ガイドラインを設けるなど、希望に応じて幅広く副業・兼業を行うことのできる環境を整備するとしています。

さらに、多様な働き方が広まるなかですべての労働者が安全で健康に働くことができるように、
長時間労働の是正、労働災害防止対策や総合的なハラスメント対策、メンタルヘルスや過重労働対策を推進するとしています。

特に、時間外労働の上限規制の適用が猶予されている医師、自動車運転者、建設業などの事業・業種に関しては、
2024年4月に施行される上限規制適用に向けて、労働時間短縮に取り組むための助成金や相談窓口設置などの支援が行われます。

また、労働契約時の労働条件明示事項における就業場所・業務の変更の範囲の追加や、
裁量労働制における改正事項についても、周知・啓発が行われるため、留意しましょう。


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