労務トラブル回避 Q&A こんなときどうする。
雇用形態の変更による年次有給休暇付与について
Q 当社は、年次有給休暇を雇入れ日方式で付与しています。勤続3年を経過した正社員が、
家庭の事情で事業年度の途中でパートタイマーに雇用形態が変更になりました。
この場合、年次有給休暇はパートタイマーとしての
年次有給休暇を与えることでよいのでしょうか。 (M社総務部)
A 年次有給休暇は、労働基準法に基づき、週の所定労働時間、週の所定労働日数、
勤続年数に応じて少なくとも下の表の日数(法定付与日数)を与えなければなりません。
パートタイマー(以下、パート)で週の所定労働時間が30時間未満であり、
かつ、週の所定労働日数が4日以下の者、または週の所定労働日数が変動する者で
年間所定労働日数が216日以下の者には、所定労働日数に応じ数を付与しなければなりません (比例付与)。
なお、年次有給休暇の付与日数は、付与基準日における雇用形態によって判断され、
年度の途中で正社員からパートへ雇用形態の変更があった場合でも、
次の付与基準日まで付与日数が変更されることはありません。
たとえば、年次有給休暇の付与基準日が雇入れ日方式の場合で、
勤続3年6ヶ月経過している正社員は、既に14日を付与されていることになります。
仮に前年の残日数 (繰越分)が5日であった場合、勤続4年6ヶ月目までの合計保有日数は19日(14日+5日) となります。
その者が勤続3年6ヶ月経過後4年6ヶ月目までの途中で正社員からパート(週3日勤務) に変更された場合でも、
新たな付与基準日となる4年6ヶ月目までの間はその19日を保有することになります。
そして、新たな付与基準日の4年6ヶ月目には、雇用形態の変更に基づきパートとして比例付与により、
新たに9 日の年次有給休暇が付与されることとなります。
このように雇用形態が途中で変更となっても、年次有給休暇の付与日数は、
あくまで付与基準日の雇用形態によって決められ、一度付与された年次有給休暇の権利は 取り消されることはありません。
また、雇用形態が変更になっても勤務は継続していますので、
新たな付与基準日に何日付与するかは過去の勤続年数に比例します。
雇用形態が変更になったからといって勤続年数がリセットされることはなく、通算されます。
次に、年次有給休暇の取得日の賃金が通常賃金で支払われるときは、正社員からパートに雇用形態が変更になると、
正社員のときに付与された日数分を取得する場合の取得日の賃金はパートとしての勤務ですので、
パートとしての所定労働時間に時間給を乗じた額を支払うことになります。
たとえば、正社員時の1日の所定労働時間が8時間で1日5時間のパートに切り替わった場合には、
年次有給休暇を1日取得した場合は5時間分の賃金を支払えばよいことになります。
なお、月曜日は2時間、火曜日は5時間など日によって労働時間が異なるパートの場合には、
年次有給休暇を取得したその日の所定労働時間分の賃金を支払うか、
労働基準法の平均賃金 (過去3ヶ月分の賃金の平均額)を支払うかなど、
パートが年次有給休暇を取得した場合の賃金について決めておく必要があります。
今月の ポイント
正社員からパートタイマーに変わっても、すでに付与された年次有給休暇の残日数は そのまま引き継がれる。
次の付与基準日からはパートタイマーとして付与される。