コラム

《制度》人手不足に向けての対応
社員紹介制度の運用と注意点

少子高齢化が加速する現代において、労働市場では人手不足が年々深刻な問題となっています。
コロナ禍の影響による雇用情勢の変化を踏まえ、確かな人材確保に向けた採用制度として注目されている「社員紹介制度」について、その運用と注意点を確認しましょう。


人手不足の現状

2022年度の雇用政策研究会が公表した資料によると、コロナ禍の影響で、企業の求人活動の鈍化に加え、失業期間の長期化や求職者数の高止まり、女性や高齢者を中心とした非労働力化によって、人手不足の現状が一層深刻化する懸念があると報告されています。

同時に、テレワークの活用や副業・兼業の推奨、短時間勤務など柔軟な働き方、フリーランスの台頭など、働き方の多様化への理解と対応が求められています。
経済活動の活発化に伴い、企業における雇用とキャリア形成のミスマッチを解消する取り組みは必要不可欠となっています。

社員紹介制度とは


人手不足の緩和に対する企業の取り組みは、募集・採用など労働市場への外部調達や、配置転換や定年再雇用といった内部調達、賃金体系の整備や業務の見直しなどにより行われています。

特に人材不足について取り上げた「労働経済の分析(令和元年版)」では、「募集しても応募がない」企業が最も多い状況にあると報告しています。そのような状況下で新たな採用制度として注目されているのが「社員紹介制度」です。

この制度は、企業が自社の社員に知人を紹介してもらい、採用に至った場合には報酬を支払うという採用手法です。
企業理念や社風、業務を熟知している自社の社員が職業紹介を行うため、採用時に起こるミスマッチを解消できる可能性が高くなります。
さらには、人材採用について、企業と社員が職場の現状や課題を共有して取り組むことにより、帰属意識が高まり、離職率を抑える効果も期待できます。
また人材紹介業者を利用することにより発生する多額の費用を減らし、経営負担を和らげる手段ともなります。

反対に、人材採用に社員が参加することにより、公私混同の怖れや特定の社員からの紹介が重なることによる派閥形成のリスクがあります。
また報奨金の獲得が先行してしまい、本来の目的である自社にマッチした人材採用そのものがないがしろにされてしまう危険性も内在しているため、慎重な対応が必要です。

法規制上の注意点


報酬を伴う職業紹介は、職業安定法をはじめ法律により規制されています。
委託募集については、厚生労働大臣の許可を必要とし、報酬の額についても厚生労働大臣の認可が必要となることが、職業安定法第36条に定められています。

一方で、自社の社員による職業紹介は法規制の対象外となっています。
ただし、職業安定法第40条により、社員が紹介により得られる報酬は、手当など賃金の一部として支払われる必要があります。
報酬の額についても、本来の賃金額や賞与額を超えて高額となる場合や、紹介回数に制限がない場合は、素として利益を得る職業紹介とみなされる可能性があります。
中間搾取は、労働基準法第6条により調期付きで規制されているため、注意しましょう。
また社貝紹介制度による報奨金は、給与所得としての源泉徴収が必要です。
税務上の取り扱いをしっかり確認して対応する必要があります。

制度導入に向けて

社員紹介制度導入を検討する場合、就業規則などを整備する必要があります。
賃金規程には、社員への報奨金を手当など賃金の一部として組み込み、紹介回数を制限して、1人の社員が受け取れる金額に上限を設けることが重要です。

「労働経済の分析(令和元年版)」では、人手不足は、長時間労働の増加や休暇取得数の減少など、働く人の職場環境に直接影響を与え、働きがいを消失させる要因になると報告されています。
人手不足を緩和し、「働きやすさと働きがい」のある職場環境を整備することは、安定した人的資本の確保において欠かすことのできない重要な課題となっています。
まずは、過去の退職者の退職事由の分析から始めてはいかがでしょうか。


コラム

対応エリア

「工場仕事さがし」では、愛知県豊田市を中心に、全国の工場・製造業の求人情報をご紹介します。

運営会社

株式会社エイチアールテクノ
豊田市丸山町4-18-1
TEL (0565)26-7181

HOME