日本の老舗企業が世界最多である理由とは
業歴100年を超える企業は4万3631社
日本は世界トップクラスの長寿大国として知られていますが、創業100年を超える企業の数も世界で群を抜く“老舗大国”でもあります。
歴史の荒波を乗り越えて事業を継続する企業に特徴はあるのか。
帝国データバンクの「全国 『老舗企業』 分析調査 (2023年) 」 を中心に見ていきます。
業種別トップは「貸事務所」
帝国データバンクの「全国『老舗企業』分析調査(2023年)」によると、
日本で創業100年を超える「老舗企業」は2023年9月の時点で4万3631社を数えることがわかりました。
同調査では、海外機関の調査による世界で創業・設立から100年を経過した老舗企業は、
2022年時点で約7万5000社あると報告しており、このことから世界の老舗企業の約6割が日本に存在していることになります。
(細分類)にしたもので、最も多いのは不動産業の一つである「貸事務所」の1401社。
15年前と比べると1000社近く増加しています。
次いで多い「清酒製造」は規制の影響で新規参入が難しく、約8割が老舗企業とのこと。
また、世界最古の企業といわれる金剛組 (大阪府、578年創業)に代表される「一般土木 建築工事」、
「木造建築工事」といった建設業も多く、それらに付随した業種の「木材・竹材卸」も上位に入っています。
トップの「貸事務所」においては1401社のうち619社が従業を持っており、
その内訳は「不動産業ではない業種」が334社、「不動産業」が285社でした。
従業が不動産業である285社においても、このうち90社は20年前の主業が不動産業とは異なる業種でした。
また、従業を持っていない企業782社のうち、20年前の主業が不動産業とは異なる業種だった企業は372社。
つまり「貸事務所」を主業とする老舗企業の半数以上が不動産業とは異なる事業を手掛けていたことがわかります。
調査からは、地域の一等地での小売業・サービス業の展開や長年保有している土地・テナントを不動産関連事業に活かすなど、
時代の流れや産業構造の変化に合わせて業種を転換することで会社を継続してきたことがうかがえます。
長寿の秘訣は不易流行
同社が実施した「全国『周年記念企業』調査(2024年)」によると、
2024年に創業100周年を迎える企業は2019社。
老舗企業に仲間入りする企業は毎年2000社前後で推移しています。
企業の平均寿命が23.3年 (2023年、東京商工リサーチ調べ) といわれるなか、
戦禍や災害などの様々な危機を乗り越えて事業を継続することは決して容易ではありません。
企業における長寿の秘訣としてよくいわれるのが「不易流行」です。
経済産業省の「2018年版ものづくり白書」によると、
老舗企業は「企業の経営方針の根幹をなし、精神的な拠り所となる『家訓、 社訓、社是等』は守りつつも、
顧客ニーズや時代の変化に合わせた製品やサービ スを提供し続けるなかで事業を変化させている」としています。
老舗企業の経営の在り方を学ぶことが企業活動を持続していくための糧になるかもしれません。